「東方風のミスフルSTGがやりたい」
 ミスフル弾幕風 〜 Fantastic parody of "Mr.FULLSWING".



犬飼達と和解した後日、御柳は郷を出たいと言い出した。

力を制御出来るようになったとはいえ、周囲に与える影響は完璧な0にはならない。高天原で暮らしていたら、また大神を傷付けてしまうと思ったのだ。

大神は大丈夫だと笑ったし、実際意識して力を使わない限りさしたる問題はない。
しかし御柳は、万一にでも同じ過ちを犯す事が怖かった。
共に暮らした事を後悔するくらいなら、いっそ会えなくなる方がいい。

 辰羅川「でも、せっかくやっと元通りになれたのに…!」

 犬飼 「お前の力なんか大した事ねぇよ、とりあえず」

 御柳 「ふん。少なくともお前の百万倍は強ぇよ」

 犬飼 「笑わせんな、ヤンキー狐」

 御柳 「何だと霜月生まれ!」

 大神 「ったく、ホントお前らは隙あらばじゃれ合いたがるな〜」

睨み合う2人の頭を、大神が乱暴に掻き回した。
じゃれてねーよ痛いってバカぢから、と憎まれ口を叩きながら、御柳はふっと遠い記憶を思い出す。


そうだ。よくこんな風に撫でられた。
あの頃のように、大神の手は大きくないけれど。

何て懐かしいんだろう。
何て温かいんだろう。

郷を出れば、きっともう2度と――


 大神 「御柳よぉ」

 御柳 「あ?」

 大神 「BIGな男になるためには、ロマンのある過程を歩まなきゃな」

 辰羅川「…ロマンって……ひとり別れてしまうのに……」

すっかりしおれている辰羅川の翼を、大神が摘まんで大きく広げる。
そしてそのまま前後にバサバサと揺らし、あっけらかんとした声で言った。

 大神 「そんなにションボリすんなよな〜。
     海の向こうったって、辰坊はいつでも会いに行けんだろ?
     塔の留守番は大神さんがしてやっからよ」

 辰羅川「けど、犬飼くんや大神さんは!」

 大神 「ハッハッハ。
     オレなんかは晴れた日に空を見上げりゃそこにいるって事」

 犬飼 「とりあえず、オレは別に会えなくてもいい」

 御柳 「けっ!!オレだってお前と離れられれば清々すらー」

 犬飼 「こっちの台詞だ弱虫」

 御柳 「んだと、この……」

 大神 「テメーらはいい加減にしろや〜〜!!」




高天原の真ん中の、神さびた社の前。
上風が草花を撫ぜる音に紛れて、狐とお揃いのBIGなコブを頭に拵えた狛犬が「さみしくなったら帰って来い」とボソリと言った。


そう、何も今生の別れというわけじゃない。
郷へ戻れば会えるじゃないか、みんな元気でいるのだから。

どこにいても大神は見守ってくれている(らしい)し、郷のものが恋しければ辰羅川をパシって調達させられる。
犬飼だって……まぁ、アホ犬の事はどうでもいいけど。


何だバカらしい、孤独になるわけではないじゃないか。
海の向こうのまだ見ぬ国より、隠者の森の方がずっと遠く感じる。

ハラハラと夜桜が舞う遠国の星空の下、杯に月を浮かべ、故郷を偲んでちびりちびりと一人酒……。
……おお、このシチュエーション、BIGな男のロマンじゃないか!?












――しかし、郷を出てどこへ行けばいいのだろう?



 羊谷 「それなら丁度良いとこを知ってるぜ!」

 大神 「うおっ、羊谷の兄さん!?」

 犬飼 「…いつからそこにいたんすか」

様子を見に来たものの出るタイミングをすっかり逸していた羊谷が、ここぞとばかりに口を挟んだ。


羊谷は、東大陸にある“神無帝国”という国の名を挙げた。
羊谷の記憶が正しければ、それは「神無き帝国」の名の通り昔から信仰を持たない君主国である。この国ならば御柳の能力が徒らに悪影響を及ぼす危険性は薄いだろう、という事だった。

話の終わりを待ち切れず日和見の塔へ文字通り飛んで行った辰羅川が、話が終わる頃に真新しい地図を持って戻って来た。
草原に座り込み急いでそれを広げると、興奮した面持ちで羊谷を見上げ尋ねる。

 辰羅川「どこですか!?東大陸……近いんですか!?」

 羊谷 「近くはねぇな。大陸から離れてたからここに郷を創ったんだ、俺ぁ。
     神無は確か、大陸の真ん中辺りに……」

その言葉と同時に、羊谷以外の3人がススッと地図の周りに集まる。
出遅れた羊谷が慌ててその輪へ加わり(その際狐の尻尾を踏ん付けたらしく「ぎゃん」という悲鳴が上がった)、全員で大陸の真ん中辺りを眺め回した。

 犬飼 「…ねぇ」

 大神 「うっ!?そういや犬飼お前、遂に文字が」

 犬飼 「よめねぇ」

 大神 「そうか……」

 御柳 「じゃあどいてろよ、1番見やすい位置に陣取りやがって」

ところが、寄ってたかっていくらどこを探しても神無などという国は見付からない。辰羅川が、ウソツキ、と言わんばかりにジトッと羊谷へ視線を向けた。

 辰羅川「どういう事ですか、元老」

 羊谷 「ハハハ、いや〜、っかし〜な〜。
     知らねぇ間に滅んじまったのかな?」

 白雪 「フフ。とんでもありません」

ボリボリと頭を掻く羊谷の背後に、いつの間にか白雪が立っていた。
普通なら跳び上がるところだが、白雪が気配を絶ってやって来るのはいつもの事である。
期待外れに気の抜けた顔から漏れ出た挨拶達に白雪は適当に応えつつ煙管を咥え、指先で刻み煙草を丸めながら話を続けた。

 白雪 「神無はありますよ。大陸の真ん中辺りにしっかりとね」

 辰羅川「えっ、本当ですか!?」

 御柳 「別に滅びたとかそういう訳じゃ…?」

興奮にはためく緑の翼を迷惑そうに押し遣りながら、上から引っ張られているかのようにピンと耳を立てた御柳が平静を装って尋ねる。

 白雪 「勿論。滅びるどころか、東で1番の強国になっているよ」

 羊谷 「ひゃ〜、そうなのか。
     俺らの時代には目立ちもしてなかったんだがねぇ」

 大神 「ほほ〜ん」

 白雪 「ほほ〜んじゃないよバカ神。
     なんで現世全体を管轄してるはずのお前が知らないんだよ」

 辰羅川「大神さん、本当に御柳くんのこと見守れるんですか…」

 大神 「大丈夫大丈夫!BIGにいこうぜって事!!」

 御柳 「ごまかすなよ」

 犬飼 「大神さんをバカにすんな!!」

そうしていつものように言い争いを始めた子供達を横目に、郷の頭首はのほほんと笑って言った。

 白雪 「まぁとにかく、行くアテはちゃ〜んとあるって事さ。
     手配はしっかりしておくから、心配しなくていいからね」







――かくして、御柳の1人暮らしの舞台は無事に決定したのであった。



それにしても、何故神無帝国は地図に載っていなかったのか?

それは羊谷が外政から離れた直後に“神無(かんむ)帝国”という名がなまって変化し、改められているからである。


現在はその国の名を、“華武帝国”という。




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