「東方風のミスフルSTGがやりたい」
 ミスフル弾幕風 〜 Fantastic parody of "Mr.FULLSWING".



○4面中ボス アガペと死の盟神探湯 監堕汰さん(かんだたさん)〜Kandata-san
種族:妖精
能力:ありとあらゆるものを拷問する程度の能力

日和見の塔で働いている妖精さん。見た目は怖らしいが、気を許した相手に対しては温厚で慈悲深い。身寄りのない幼い妖怪を見付けては保護し、自宅で養っている。

塔への勤務時間は午の刻から酉の刻くらいで、主な仕事は来客をもてなす事。また不審者が侵入した場合に追い払うか、捕えたのち然るべき処置を与える事である。
運悪く監堕汰さんに捕えられた者は塔の拷問室に監禁され、指間鉛筆の刑、袴尻破りの刑、私記朗読の刑などの苛酷な拷問にかけられるとして郷の民に恐れられている。

日和見の塔では他にも柄の悪い妖を何人か雇っているが、どういう成り行きで雇う事になったのかは不明。


○4面ボス 神明の守護竜 辰羅川 信二(たつらがわ しんじ)〜Tatsuragawa Shinji
種族:竜
能力:天気を調節する程度の能力

所持スペルカード
 神水「アプリオリ・ウェザーリポーター」
 座礁「アンチノミージレンマ」
 沈潜「メイズオブエミール」
 信疑「アポステリオリパララックス」
 賢竜「リアリゼーション・プロレゴメナ」
 従犯「ラメントフロウ」
 詩篇「メモリー・オブ・ドリーム」

天候を司る神・一目連の使いである(但し、信仰を得られなくなり弱体化した一目連が竜の監督権を大神に譲ったため、現在の竜の主人は大神となっている)。

竜とは一目連から水循環を操る能力を授けられている幻獣であり、現世の気候調節は古往今来、竜達が地域分担して行っている。
現世で竜が姿を見せる事は稀だが、存在を確認する事ならばどの地に於いても難しくはない。虹を探せばいいのだ。竜が通り過ぎた空には、美しい虹が架かる事が多い。

――

かつて大神を慕って共に現世へ下り、十干の郷の天候監理と高天原の見張り番を名乗り出た竜がいた。

竜は高天原を囲う“鎮守の森”に、原へ通じる一本道を作って欲しいと羊谷に頼んだ。そして一本道が出来ると、その道の途中に“日和見の塔”という高い塔を建てた。
大神の社への参拝者は必ずこの一本道を辿り、塔を通って高天原に入る。
それは、鎮守の森は一度足を踏み入れると抜け出す事が難しい迷路のような森だからである。食料を探して生き延びようにも、自生するのは毒を持つ植物や果実のならない雄木ばかり。好奇心旺盛な子供妖怪の探検の場にすらならず、付いた異名が『死出の樹海』。
出来るだけ大神と接触する者を掌握したい竜にとっては絶好のロケーションであった。

竜は滅多な事がない限り塔から離れず、天候監理の仕事をこなしつつ参拝客の挨拶に応じたり、不審者を注意したりしながら淡々と生き、老齢に達してから1匹の子を作った。
竜族は無性生殖種だが、生殖を行う事が出来るのは往々にして寿命の間際である。子供に力の使い方を叩き込むと、「自分の一族は代々自分と同じ仕事をし、この塔で一生を終えるよう」と言い残し、日和見塔の天気竜は事切れた。

辰羅川は、その竜の3代後の末裔である。
辰羅川の先代の竜は生殖から寿命までの期間が特別長く、辰羅川を産んでからも暫く現役で番をする事が出来た。そのため「私の寿命が来るまではこの子は仕事がないので、あなたの元で徳を分けてやって欲しい」…という訳で辰羅川は大神に預けられ、犬飼や御柳と共に育てられる事となったのだ。
実のところ先代は、子の扱い方が分からず育児放棄をしただけであったが。

――

竜の性格は一様に思慮深く従順、そして主体性がない。
任務を与えられると自信に満ちて粉骨砕身にこなすが、与えられなければ途方に暮れる。誰かの配下について命令を受けないと何も出来ないし、また竜という獣はそうあるべきだとされていた。エゴイズムに目覚めて与えた力を私用される事を、一目連が良しとしなかったからである。
辰羅川も例外なく自主的な行動は一切出来ず、何かに対して首を横に振る事もしなかった。

大神に預けられてから、ただ尽日を過ごすだけという高天原の環境で辰羅川は困り果てた。大神に命令を求めても、「自分で考えて正しいと思った事をしろ」としか言ってくれない。何を考える事が正しいのかも分からないから、いつも犬飼達に付いて回って悪戯に追従しては一緒に怒られていた。


太陽が消えた日もそうであった。

大神は白雪と世間話をしており、犬飼は大神の足元で独り遊びに夢中になっている。その隙に御柳に連れられて社に入った。大神の憑り代にいたずらをする間、その見張りをしろと言われたのだ。

憑り代には触れてはならないと言われている。
これはいけない事だ。
そう思いながらも、見張りを命じられた辰羅川に御柳を止めるという選択肢はない。

御柳が手を触れた瞬間憑り代が粉々に砕けるのを、黙って後ろで見ていた。


大神が封印された少し後に先代の竜が息絶え、辰羅川は新しい監理者としての職務に追われるようになった。
あの日から消息を絶った御柳の事は気掛かりだったが、探す宛てもない探し物のために塔を出る事など絶対に出来ない。何しろ、先代に命じられているのだから。

だがある日、辰羅川は塔へやって来た行商人からこんな話を聞く。
「御柳らしき狐を、隠者の森の近くで見掛けた」。

今、高天原では犬飼が独りぼっちだ。
きっと御柳は、憑り代を砕いた事を自分達に恨まれていると思っているから姿を消したのだ。
犬飼も白雪達もちっとも御柳を責めていない事を伝えさえ出来れば、御柳は高天原へ帰って来てくれるに違いない!

辰羅川は塔を離れるなという言い付けを忘れた事にして、洋々と森の方へ向かった。
あちこちを飛び回るが御柳の姿はなく、森の近くにたむろしていた強面の妖怪達に恐る恐る尋ねると、何と御柳は彼等とつるんでいるのだという。
どうしてこんな怖い妖怪と?という不審を察してか、妖怪達は何か2,3言葉を交わしてから自分達の住処へ辰羅川を案内した。そこは異臭に満ちていたが、微かに、しかし間違いなく御柳のにおいがする。
幼馴染の気配に小さな竜は目を輝かせ、不自然にニヤつく妖怪達に向かい深々と頭を下げて礼を言った。

以後の事は、辰羅川の記憶にあまり残っていない。
目が覚めたら、うつ伏せで河原に転がっていた。ゆっくり意識を取り戻し体を動かそうとした瞬間、凄まじい激痛が全身を襲う。

そう、あのあと妖怪達は、何の前触れもなく突然辰羅川を甚振ったのだ。
ただでさえひ弱な辰羅川が乱暴で巨躯な妖怪の集団に反撃など出来るはずもない。妖怪達は無抵抗同然の竜の子供を珍しい玩具で遊ぶかのように嬲り、そのうち気を失い反応しなくなった事で飽きて適当な場所に放置していったのであった。

呼吸しているだけでも刃物を捩り込まれるように胸が痛むのに、身体を起こすためにはどれ程の絶痛に耐えなければならないのか。
恐怖で地面に縫い付けられたまま、ぼろぼろ泣きながら辰羅川は反芻した。
自分へ向けられた冗談のような悪意を。

御柳にとって高天原の連中は邪魔な存在らしい、もう関わりたくないそうだ――という、信じられない宣告と共に。


面白半分に羽を引き千切られたせいで空も飛べず、通りすがりの精霊の助けを借りて何とか塔へ戻ったものの、頭の中には妖怪の言葉が絶えず渦巻く。
…犬飼に、何と言えばいいのだろう?
傷の手当ても忽せに、混乱したままヨロヨロと高天原へ向かう。


そこで辰羅川の目に飛び込んで来たのは、血まみれで倒れている狛犬とその周りに散らかる汚れたスペルカード。

先刻自分を痛め付けたものと、同じ種類であった。


――それからというもの辰羅川は、苦労を努力を慈しみを、全てを犬飼のために捧げた。
あの日から光を失ってしまったような犬飼に、無視されようが、時に暴言を吐かれようが構わず優しい言葉を使い世話を焼いた。

大神不在の今。辰羅川の主人は大神のエージェントである犬飼で、竜が尽くす理由はそれだけで余りある。
しかしそれ以上に辰羅川は、あのとき不用意に塔を離れた事を深く悔やんでいた。
塔を離れなければ、妖怪達が高天原に入る前に犬飼へ異常事態を知らせる事が出来た。太刀打ちする事は出来なくても、時間を稼いで犬飼を逃がす事くらいはきっと出来た。
犬飼を守れたはずだった。

失くした太陽にならねばならなかった幼い狛犬の孤独を誰より知っていたのは自分なのに、どうして離れてしまったのか。
彼の傍にいられるのは他でもない、この頼りない竜だけだったのに!


己の能力を具現化し、弾幕の形に変えて他者を攻撃するというスペルカード。いつか辰羅川は誰かを傷付ける事が怖くて、犬飼や御柳のように『カード遊び』に興じる事が出来なかった。

日和見の塔の小さな神使は、しかし今になってカードを作り出す。この郷ではその遊びこそが、敵意ある者へ対抗する術だったから。
能力を気候調節以外に使う事がタブーであるとは知っているが、最早そんな事はどうでも良かった。
自分が能力を持っているのは種の不文律を守るためではない。
大切な存在を守るために、この力はあるのだ。

――

カードは大いに役に立った。
あの日以降、高天原への侵入を目論む妖が度々やって来たのである。気弱で臆病な竜は妖達のスペルに傷付き、また、己のスペルで妖達を傷付けた。

―しかし、鎮守の森の一本道でそのような弾幕合戦が行われていた事を犬飼は全く知らない。

その事実は単純に証明する。
辰羅川が、どんな酷い怪我を負おうが1度足りとも賊の侵入を許さなかった事を。
そしてその怪我を負った理由に何の関心も抱かない程、犬飼は辰羅川の事なんてちっとも見ていなかったという事を。

それで良い、と辰羅川は思う。
見返りなんて何もいらなかった。独り善がりだと解っていた。だってこれは、孤独な狛犬を『本当に独りぼっちにしてしまった』あの日の贖い。
盾になれるなら、それだけで良かった。犬飼が、これ以上傷付く事さえなかったら。


ふと、昔言われた言葉が頭を過ぎった。
「自分で考えて正しいと思った事をしろ」。
やっとその声が届いた気がして、守る決意を新たにする。そして敵を迎え撃つため、

竜は、高天原へ背を向けた。




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