| ○3面ボス 漫然たる大立て者 羊谷 遊人(ひつじたに ゆうじん)〜Hitsujitani Yujin |
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種族:化け羊(自称) 能力:自然を形成する程度の能力 所持スペルカード 火符「爆燃火酒」 水符「水中睡魔」 土符「隆興郷土」 風符「螺旋燕風」 禁秘「神隠しの郷」 十干の郷の創生者であり、前頭首。 大国主の眷族で能力もその血に浴するものであるが、羊谷はその事を知らない。物心ついたときから現世で妖獣として生きていたし、何より自分の出自に関心がないのである。 遥か昔、羊谷はとある島国の民であった。大陸――現在のように東と西に分離する前の超大陸――の列強を統べる大きな国で、信仰を重んずる天空海闊な君主の下、清らかな自然と神の力に守られながら暮らしていた。 しかし大陸で科学が発達し始めた頃から、羊谷の国を守っていた神々が次から次へと姿を消した。 物質文明の豊かさに傾倒した大陸の国々や、大陸の技術に熱狂した他諸国の民(羊谷の国にも数多く居た)が精神文明との調和を拒んだ結果、多くの神への信仰が薄らいだためであった。 何しろ神の恩恵は、信仰と引き換えにしか得る事が出来ない。 最早大陸の国々にとって、自然主義を提唱する羊谷の国は目の上の瘤でしかなかった。神の加護を失った羊谷の国に既にかつての偉力はなく、あっという間に滅ぼされてしまったのである。 それから何百年経っても、羊谷は元いた国への郷愁を忘れられずにいた。共に戦火を逃れた友と、来る日も来る日も亡国を想った。 ―壮年の夏、羊谷は海の真ん中に無辺際な島を見付けた。 その島は地図に載っておらず、誰も住んでいなかった。それもそのはず、土地が荒れ果てとても生物が暮らすような状態ではなかったのである。 自然を作る力を持つ羊谷は色めきたった。 これは、自分が希求していた土地だ。 ここで、追憶の楽園は蘇る。 友を呼び寄せ、協力して島の環境を整えた。 誰も注目していなかったその島が郷の形をしていると妖の間に伝わり出すと、瞬く間に住民が増えていった。人間にはまだ存在を知られていなかったので、このとき集まったのは妖のみである。長が妖獣の羊谷だったため、妖獣が特に多く集まった。 知恵と力のある妖によって郷の管理組織が形成され、緩くも明確な法を定めた(それを見届けてから、友は「このような住み良い土地を増やす」と別の島へ移住した)。 中にはその環境を窮屈に思う妖もいたが、何だかんだで郷の秩序は守られ続けている。何しろ十干の郷は羊谷の力で快適な形を保っているのだ。羊谷に反抗する事は、郷の崩壊に直結し得る。 郷で1番の問題だったのは、気性の荒い妖達による暴動の多発。 それを解決したのがスペルカードルールだった。 いくつかの決まり事がある試合形式の弾幕戦で、どんな立場の相手とも決闘する事が出来る。定期的に開催される大会に参加するも良し、好きな時好きな相手に決闘を申し込むも良し。また、申し込まれた決闘を断るのも自由である。 このルールで妖達の破壊衝動をこまめに発散させる事により、深刻な被害を及ぼす争い事の発生率は格段に減少した。 運良く日の神の恩寵に与る事も出来た十干の郷は、永らく平和そのものであった。 突然の来客にもたらされた凶報で、羊谷の目覚めは最悪だった。 犬飼には辛い思いをさせるが大神を封印した後は憑り代(よりしろ)の修復を待つばかりで、目が覚めれば全て元通りになっていると思っていた。 白雪が使いを寄越したという事は、何か異変が起こったのだ。 使いの猿は適当に追い返そうと思ったが、何やら不気味な強さを持っていた。 そして、“雨を止めたがっている”。 これは白雪に何か考えがあるのだろう、そう判断して取り敢えず猿に進路を与えてから、寝起きの元老は改めて状況を確認した。 どうやらまだ、岩戸の封印は解けていない。 さて、最悪の事態に備え、郷を守るための手筈を整えなければ……。 異変が解決された後、事情を聞いた羊谷は冷や汗をかく。 かつて住んでいた楽園は、神への信仰が失われたせいで滅びたのだ。 楽園を模して創ったこの郷を神自身の手で滅ぼされるなんて、古昔の聖典じゃあるまいし。 |